精油とは
精油(エッセンシャルオイル)は、植物の花、葉、果皮、樹皮などからエキスを抽出したもので、100%植物性のみの、揮発性の芳香物質です。すべてが防腐性のある特質を持ち、濃縮されています。
その種類は約2百種類以上ともいわれ、各植物の抽出する部位によってさまざまな香りと機能をもち、アロマテラピーには欠かせないベースとなるものです。
例えば、ラベンダーオイルは、手間ひまかけて約1年育てられたラベンダー150kgからほんの1Kgの精油しかとれません。また、ローズ・オットー・オイルの場合は、朝摘みの約65000個のバラの花からたったの15gしかできません。
精油は、植物の生命力が凝縮された貴重なもので、敬意を持って注意深く取り扱われるものです。そして、そのすべてのオイルがその香りの有効成分によって、身体と精神面へと作用してくれるのです。
- 精油は、そのまま空気中に放置しておくと蒸発していきます。(=揮発性)
- 精油は、水より軽く、水には溶けにくいですが、植物油にはよく溶けます。
(=脂溶性)
- 精油は、油といっても、油脂ではありません。
- 精油は、天然の化学物質が数十から数百集まってできた有機化合物です。
- 精油は、植物中にある場合と比べると大変濃縮されています。
精油の保存法
精油は空気中の酸素と結びついて酸化すると品質が落ちてしまいます。使用後は必ずキャップを固く閉め、密封保存しましょう。
また、光や熱によっても変質しやすいので、遮光性のある褐色のガラスびんに入れ冷暗所で保管し、夏期は冷蔵庫で保存するとよいでしょう。*プラスチックなどの合成樹脂類は化学反応で変質する場合もあるので避けましょう。
精油の使用期限
精油の使用可能期限は、開封後、柑橘系(オレンジやレモンなど)で約6ヶ月、その他は1年以内を目安に使い切るようにしましょう。*例外もあり、サンダルウッドやパチュリーなどは熟成されるほど香りに深みがでてきます。
基材となる植物油も精油と同じ条件で保存し、ホホバ油は6ヶ月、その他は3ヶ月で使い切るようにしましょう。
また、精油を植物油に希釈したトリートメント(マッサージ)オイルなどは2〜3週間以内に使い切るようにしましょう。ただし、基材にホホバ油を使用した場合や、他の植物油でも小麦胚芽油を10%ブレンドした場合は1ヶ月まで保存が可能です。*ホホバ油が酸化しにくい性質を持っていることと、小麦胚芽中のビタミンEの酸化防止効果のためです。
使用可能期限内であっても、異臭を感じた場合は酸化が進んでいる証拠です。その場合は惜しまず捨て、新しいものを作りましょう。
精油の希釈濃度
精油は、植物の有効性分を濃縮して作られたものなので、原則として原液のまま肌に使用してはいけません。(例外:ラベンダー、ティーツリーは数滴であれば良い)そこで、トリートメント(マッサージ)をする場合などは、精油は必ず植物油で希釈して適正濃度に薄めてから行います。
希釈濃度とは、基材となる植物油の量などに対して、精油が何%であるかを表します。欧米での適正希釈濃度は2%とされていますが、わたしたち日本人には1%が基本となります。(専門家が使用するときは必要に応じて1%よりも高濃度で使用されることもあります)ただし、これはあくまでもガイドラインです。顔などの敏感な場合には、必要に応じてさらに低い濃度で使用する場合もあります。精油の種類の違いや個人差もあるので、使用前にはパッチテストを行うことをおすすめします。 *パッチテストについては「使用上の注意」をご覧ください。
<精油の滴数の計算方法>
精油の容器の口には通常切り込みがあり(ドロッパー)、1滴ずつ滴下できるようになっています。
1滴が0.05mlです。
例えば、植物油50mlに対して濃度1%にする場合
- 1%相当のmlを算出 50mlx1%=0.5ml
- 精油1滴は0.05mlです 0.5ml÷0.05ml=10滴
従って1%濃度では、植物油50mlに対して、精油は10滴となります。 *2種類以上の精油を使用する場合は合計滴数が10滴以下となるように配分します。
精油の抽出法
精油の多くは水蒸気蒸留法により抽出されますが、なかには、そのときの高圧によって本来の香りや成分が損なわれるものもあります。その精油の成分の特徴、水に溶けやすいか、熱に対する強さはどうかなどの条件により、いくつかの違った抽出方法が選ばれます。
●水蒸気蒸留法
ローマ時代に開発された精油の抽出方法です。現在では装置も比較的簡単で安価ですむこともあり、多くの精油がこの方法で抽出されます。
原料となる植物を蒸し器のような釜に入れ、釜に入っている水を加熱し、蒸気を発生させます。その水蒸気により、植物の細胞に含まれている芳香成分が放出されます。 この芳香成分を含んだ水蒸気は、次に冷却管を通って冷やされるうちに液体に戻ります。精油は水より軽いので上澄みとなって浮き、これを集めます。
また、下部の液体は水溶性(水に溶けやすい性質)の芳香成分が溶け込んでいます。 この「水」を「芳香蒸留水」といい、ローズ・ウォーター、オレンジ・ウォーター、ラベンダー・ウォーターなどとして利用されます。
●圧搾法
オレンジ、レモン、グレープフルーツ、ベルガモット、マンダリンなど、柑橘系の果実から精油を抽出するときの方法です。
昔は手で果実を圧搾して、スポンジにしみ込ませ回収していました。現在ではローラーや遠心法による機械で圧搾する方法が主流です。 この方法で精油は、熱による変質を受けないので自然のままの香気を保ちます。
しかし、他の方法で抽出された精油より、変質しやすいことに注意しなければいけません。
.●冷浸法(アンフルラージュ)
ローズやジャスミンなどのデリケートな花から精油を抽出する伝統的な方法です。
ガラス板に牛脂と豚脂を混ぜたものを塗り、摘み取ったばかりの花びらを脂肪の上いちめんに張り付けます。牛脂や豚脂が香気成分を吸着する性質を利用したもので、花の香りが充分吸収されたら(3〜6日かかります)しおれた花びらを取り去り、再び新しい花びらを敷き詰めます。花の香りの吸収が飽和状態になるまで何日も何日も繰り返し続けられます。(ジャスミンの場合は約3週間くらいこの作業を続けます) この、花の香りでいぱいになった脂肪をポマードと呼びます。このポマードにアルコールを混ぜて、撹拌、蒸発させて香りをとりだします。
この方法で抽出された精油は「アブソリュート」といわれ、同じ植物を水蒸気蒸留法で抽出した場合よりとても濃縮されています。 微妙な花の香りを採取するにはとても優れた方法ですが、骨の折れる作業でコストがかかるため、現在ではほとんど行われていません。
●溶剤抽出法
これは近年、冷浸法にかわって利用されはじめた方法です。 植物中の芳香成分をよく溶かし出す揮発性の溶剤を使用します。
エーテル、ヘキサン、ベンゼンなどの溶剤を入れた釜に植物を入れ、芳香成分を溶かし出します。次に、その花の香りが移った溶剤から水分を蒸発させると固形ワックス状になります。これをコンクリートと呼びます。このコンクリートをアルコール溶剤で再び溶かし、精製して、精油を抽出します。
*アブソリュートについて* 冷浸法(アンフルラージュ)や溶剤抽出法で得られた精油を指します。 その抽出過程からも、きわめて濃厚で、強い香りと治癒力を持っているので、アブソリュートの精油を使う場合は一般的に低濃度で用いることが必要です。
精油のおもな作用
精油の作用は多種多様です。それは精油を構成しているたくさんの化学物質がいろいろな薬理作用を示すからと考えられます。ここでは、その精油のおもな作用についてご紹介します。
ただ、精油はそのすべてがまったく無害というわけではありません。使用を誤れば害となる作用が発生することもあります。精油の毒性については、「使用上の注意」をご覧ください。 また、それぞれの作用に対する精油については、「ユーザーズガイド<精油の作用>」をご覧ください。
<呼吸器系>
去痰作用:気管支から過剰な粘液を取り除く作用
粘液過多治癒作用:痰などの粘液の流動性を高め、粘膜を鎮静させる作用
鎮咳作用:咳を鎮める作用
鼻粘液排出作用:鼻の中の粘液を排出させ、鼻づまりを鎮静させる作用
<循環器系>
引赤作用:血流の量を増大させて、局所を温かくする作用
強心作用:心臓を刺激し、活力を与える作用
血圧降下作用:血圧を下げる作用
血圧上昇作用:血圧を上げる作用
血管収縮作用:血管壁を収縮させる作用
止血作用:出血を止める作用
浄血作用:血液を浄化する作用
抗凝血作用:血液が凝固するのを抑える作用
<消化器系>
消化促進作用:消化を助ける作用
食欲増進作用:食欲をそそる作用
健胃作用:胃の不調を治し、健やかにする作用
制吐作用:嘔吐を抑える作用
緩下作用:排便を促す作用
駆虫作用:腸内の寄生虫を駆除させる作用
駆風作用:腸内に溜まったガスを排出させる作用
強肝作用:肝臓と胆嚢の機能を刺激して働きを促進する作用
胆汁分泌促進作用:胆汁の分泌を促進させる作用
強脾作用:脾臓を競そうする作用
血糖値低下作用:血糖値を下げる作用
<筋肉・骨・神経>
抗痙攣作用:痙攣しないように抑える作用
抗神経痛作用:神経痛を緩和させる作用
抗神経障害作用:神経の各種の障害を減少させる作用
抗リウマチ作用:リウマチの痛みを和らげる作用
鎮痙作用:痙攣している状態を鎮める作用
鎮静作用:興奮を鎮める作用
鎮痛作用:痛みを和らげる作用
麻酔作用:痛みなどの感覚を失わせる作用
<生殖器系>
子宮強壮作用:子宮を強壮にする作用
通経作用:月経を促し、規則的にする作用
<出産>
催乳作用:乳汁の分泌を増大させる作用
分娩促進作用:分娩を促進する作用
<泌尿器系>
利尿作用:尿の量を増大させる作用
<体全体>
強壮作用:体の機能や能力を向上させる作用
解毒作用:毒物を中和する作用
解熱作用:体を冷却し、高い体温を下げる作用
健康回復作用:健康を回復させる作用
抗アレルギー作用:アレルギーの症状を緩和させる作用
抗硬化作用:慢性的な炎症のために組織が硬化するのを防ぐ作用
刺激作用:アドレナリンの分泌を増大させ、エネルギーを増進させる作用
制酸作用:体内の分泌物の酸濃度を低めたり、中和させる作用
デオドラント作用:匂いを消す作用
発汗作用:汗の分泌を促す作用
<皮膚>
細胞成長促進作用:皮膚細胞の成長を促す作用
止痒作用:かゆみを止める作用
制汗作用:汗の分泌を減少させる作用
瘢痕形成作用:瘢痕組織ができるのを助ける作用
皮膚軟化作用:皮膚を鎮静させ、柔らかくする作用
腐食作用:皮膚を腐食させて、いぼを取る作用
癒傷作用:組織の変成を防ぎ、傷からの出血を止めて傷を治す作用
<その他体に関するもの>
抗ウィルス作用:ウィルスを抑制する作用
抗感染作用:感染症と闘う作用
抗微生物作用:微生物を減少させる作用
殺菌作用:細菌を殺す作用
殺真菌作用:真菌による感染症を治し、真菌を死滅させる作用
殺虫作用:有害な昆虫を殺す作用
殺微生物作用:微生物を殺す作用
歯痛緩和作用:歯の痛みを和らげる作用
収斂作用:組織を引き締め、収斂させる作用
消炎作用:炎症を鎮める作用
消散作用:おできや腫脹を散らす作用
消毒作用:組織の変成を防ぎ、感染を抑止する作用
<心理作用>
抗鬱作用:抑鬱な気分を明るく指せる作用
催淫作用:性欲を高める作用
制淫作用:性欲を抑える作用
頭脳明晰化作用:脳を刺激して明晰化する作用
使用上の注意
-安全にご使用いただくために-
- 精油は、決して飲まないで下さい。
- 精油は、薄めずそのまま肌につけることはしないで下さい。
- 目に入らないようにご使用下さい。万一入った場合は、たっぷりの水で洗い流して下さい。
- 精油は、引火する可能性があるので、台所など火気のまわりでの使用は避けて下さい。
- 開封後はできるだけ早くお使い下さい。有効期限は1〜2年です。但し、柑橘系は6ヶ月を目処に使い切って下さい。
- キャップをしっかりと閉めて、冷暗所にて保存して下さい。
- お子さんやペットの手の届く場所には置かないようにして下さい。
- 精油を肌に使用する場合は、事前にパッチテストをしてください。
希釈濃度に従ったブレンドオイルを、前腕部の内側に適量塗り、24〜48時間放置します。皮膚にかゆみや炎症などの異常があった場合は、使用を止めてください。その時点で大量の水で洗い流し、場合によっては石鹸を使用してください
- 下記の精油は、肌を刺激する成分<皮膚刺激・皮膚感作>があるため、トリートメント(マッサージ)には最高1%まで希釈し、お風呂での使用は1〜2滴程度でご使用ください。(脂肪分充分なミルク、もしくはベースオイルで希釈して下さい)皮膚の敏感な方は使用を避けることをおすすめします。
*皮膚刺激・皮膚感作:精油を皮膚に用いて起きる発疹や炎症、アレルギー反応のことです アンジェリカ、オレンジ、クローブ、シトロネラ、シナモン、ジンジャー、ナツメグ、ブラックペッパー、ペパーミント、レモン、レモングラス、レモンバーベナ
- 下記の精油は、<光感作>があるため、肌を日光にさらす前の肌への使用は避けて下さい。
*光感作:精油を皮膚に塗り、紫外線に当たることで起こる炎症をいいます ベルガモット、レモン、バーベナ、アンジェリカ、オレンジ、ライム
- 下記に該当する方のご使用は、医師や、専門知識のある人にご相談下さい。
妊娠中の方:妊娠時の吐き気、背痛やむくみ、妊娠腺などに対して、アロマテラピーの役立つ場面はたくさんあります。しかし精油の中には、月経を引き起こしたり胎児に影響する可能性があるものもあります。室内芳香以外の使用はなるべく避けた方がいいでしょう。例え、薄い濃度での室内芳香でも不快感を感じた時は、使用を中止した方がいいでしょう。
赤ちゃんや小さいお子さん:3歳未満の乳幼児には、低濃度での室内芳香のみでご使用下さい。また、3歳以上であっても、子供に対しては充分注意して使用し、その場合も成人の使用量の1/10位からはじめ、1/2位までを限度とするのがの望ましいでしょう。
高血圧やてんかん症の方は、ローズマリー、フェンネル、タイム、ヒソップのご使用は避けて下さい。
精油には心や体を健やかにする働きがたくさんあります。 しかし、精油は薬ではありません。 上記にかかわらず、自分のからだに異常や異変を感じた場合は、すぐに使用を止め、医師の診断を受けることをおすすめします。
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